宇宙戦艦ヤマト(1974)は新しいterra地球 もとえera時代の始まり〔歌詞・TVアニメの解釈〕
↑From official YouTube channel of ‘Chor stella’
(Tale)
はじめに
今更ながらですが、ほとんどの人が当たり前のように、空気や毎日の飯のように知っている、この曲について今日は書きます。
たまたま、上のようなコーラス版を聴いたことがきっかけでもありますが…。
ひとまず、歌詞を以下に…。なお、3番・4番は、当時レコーデイングまではされなかった幻の歌詞とされます。
1) さらば地球よ
旅立つ船は 宇宙戦艦ヤマト
宇宙のかなた イスカンダルへ 運命背負い 今飛び立つ
必ずここへ 帰って来ると 手をふる人に 笑顔でこたえ
銀河をはなれ イスカンダルへ はるばる望む
宇宙戦艦ヤマト2) さらば地球よ
愛する人よ 宇宙戦艦ヤマト
地球をすくう 使命を帯びて 戦う男 燃えるロマン
誰かがこれを やらねばならぬ 期待の人が俺たちならば
銀河をはなれ イスカンダルへ はるばる望む
宇宙戦艦ヤマト3) さらば地球よ
緑の星よ 宇宙戦艦ヤマト
花咲く丘よ 鳥鳴く森よ 魚棲む水よ 永久に永久に
愛しい人が 幸せの歌 ほほ笑みながら 歌えるように
銀河をはなれ イスカンダルへ はるばる望む
宇宙戦艦ヤマト4) さらば地球よ
作詞:阿久悠 作曲:宮川泰 歌:ささきいさお(TVアニメ「宇宙戦艦ヤマト」主題歌)
再び遭おう 宇宙戦艦ヤマト
戦いの場へ 旅路は遥か 命の糸が 張りつめている
別れじゃないと 心で叫び 今 紫の 闇路の中へ
銀河をはなれ イスカンダルへ はるばる望む
宇宙戦艦ヤマト
ひとまず歌詞の遂次解説
- 以下、できるだけ純粋に歌詞の言葉から(アニメのストーリーはできるだけ置いといて)、解釈します。
- 1) 宇宙戦艦「ヤマト」に乗り、遠い宇宙の先イスカンダル星に向って、人々に見送られ地球を旅立つところ
何かの運命まで背負った重いミッションであることが読み取れる
帰ってこれない可能性もあるミッションとは、遠い宇宙の果てまでの旅路だからか、それとも… - 2) 残していく家族等大事な人への想い
ミッションは「地球を救う」レベルのものだった
「戦う」とは、ここでは必ずしも戦闘に限らず、とにかくとても大変なタスクに挑むという広い意味に取れる文脈で使っている、すぐ次にロマンなどと言ってるから
とにかく、みんなのために、選ばれた自分たちがやるという強い男気
3) 救うべき地球のことを述べている
「地球を救う」ミッションの内容が、普通に常識的に読むと、花が咲き鳥が鳴き魚が泳ぎ人々が癒される地球の自然を平穏に楽しむことがいま不穏な脅威で妨害されていることを取り除く、くらいに読んでしまうが、それではミスリードで終わってしまうので、ここはアニメのストーリーに触れておけば――地球は、悪の帝国の遊星原子爆弾による放射能で大地が赤茶に汚染され滅亡寸前で、地下に逃れた人類の希望を背負い、ヤマトは放射能除去装置を提供してくれるイスカンダルへ、帝国の妨害を受けること承知で旅立つのでした(参照:次のバンダイ公式サイト)――放射能除去装置を持ち帰り、花が咲き鳥が鳴き魚が泳ぎ人々が癒される本来の緑の大地を取り戻して地球と人類を救うことがミッションでした - 4) ここでの「戦い」とは、命の糸が張りつめるくらい生死を掛けたレベルのもの、つまり戦闘であるくらいなほどのものであることが読み取れる
また会おうと言いながらも、今生の別れになるかも知れないと心の奥では叫んでいる決死の覚悟
紫の闇路とは、基本は宇宙の色だが、命を落とすことになるかもしれない黒でも白でも青でもない、何が起こるか不明のはっきりしない色合いの暗闇、暗中模索の危険な闇への路に入っていく…
↑バンダイビジュアル公式ウェブサイト へ
総合的、俯瞰(フカン)的な解説
まず、いきなり余談ですが、↑出だしのChor stellaのコーラスが曲に非常にマッチしてる
声を共にして合唱というのが、決死の覚悟の男気で旅に出る勇者「達」の姿にマッチする(眠そうな人もいるが)
男だけでなく、女性のソプラノボーカルも囲み映像でしっかり登場し、男女=人類の一丸感まで出ている
…と、ここまで前置き。
汚染された地球を救うための壮大な、戦いも厭わない決死の、真剣なミッションという設定が明快で、子供にも分かりやすく、毎回最後に流れる「地球滅亡の日まであと○日」というメッセージで臨場感たっぷりにさせてくれ、まさに手を振って応援したくなり、大うけした。これを観て、子供はみんな「遊んでばかりでなく、自分も世のため人のためきっと役に立てるよう頑張ろう!」と、心を引き締めて勉強した(ハズ)
…というように、ストーリーそのものの出来がよかったわけだが、例によって、さいらに大きな話(解釈)を以下。
Keyは、この作品ができたのが1974年というのと、宇宙戦艦名がヤマトということ。
ヤマトとは言うまでも、たしかアニメ第1話でも紹介されるが、太平洋戦争末期の1945年に鹿児島の島嶼沖で撃沈された日本最大級の日本を代表する戦艦「大和」のこと(アニメでは、それが宇宙戦艦に改造された設定)。戦争末期の「特高隊」という言葉が戦闘機で有名だが、実は、大和も最後は、始まった沖縄戦の戦況を変えるべく「海上特攻」作戦として沖縄に向かって航海し、途上で撃沈された戦艦。
もう日本全土に空襲が飛来し、海軍基地にも機雷がばら撒かれるなど、日本は敗色濃厚というかそれ以上の…時期。特攻という作戦で多くの命とともに海に沈んでいった日本の古称を冠した大和は、長らく、日本人にとって戦争の悲劇を象徴する心の痛みだったはず。
…戦後しばらくして高度成長し、「戦争」の生々しい記憶、あるいは「戦後」意識もようやく薄れてきた中で、悲劇の象徴だった大和を、せめてSFの世界では、地球の未来を救う英雄として再生してくれ、また、無念の海兵たちを鎮魂してくれたところが、広く多くの日本人の心を打つこととなった背景。(製作者たちがそこまで意識せず、図らずとも無意識にそれを生んだ時代背景だったのだと思う)
アニメの中、ヤマトの活躍で地球は新たに再生されたが、実は日本人にとって、戦争の心的後遺症から抜け出して新しい時代を歩み始めたことの象徴的なアニメと解釈できる
…4番の歌詞は、ほとんど戦歌に近い。「今、紫の闇路の中へ」入っていく当時の大和の隊員たちの心境はどんなであったか。4番までの歌詞を知った今、じぶんはこの曲を、太平洋戦争に赴き亡くなられた方々の鎮魂歌としても聴くこととなった。
太平洋戦争の余談
写真は、日本の宣戦布告文書(1941年)を打ったとされるタイプライターで、おそらく今も、とある日本の外国公館に置かれている。その文書がアメリカ側に到達する数時間前に真珠湾攻撃が始まったことで日本は奇襲をかけたとされているのは有名な話である…