人生の悔いを癒やされるのは主人公と観客―映画/Field of Dreams フィールド・オブ・ドリームス

(Tale)

― 1989 アメリカ映画(監督・脚本:Phil Alden Robinson) 
Key Words:人生の悔いを癒やす奇跡、家族愛、亡き人への想い、Ghost 

LAエンゼルスが過去一度優勝した2002年MLBワールドシリーズを当時NHKで観ていたら、地元エンゼルスが劣勢のアナハイム球場電光掲示板にメッセージが点滅した。
‘If you make a noise, it will come.’(騒音を立てれば、それ(逆転劇)がやってくる)
…騒音を立てるのがエンゼルス球場式応援と言う以外特に解説されなかったが、分かる人には分かる、10年ほど前の映画を真似た掲示だったのだ。

If you build it, he will come. / Ease his pain.(それを作れば、彼は来る。/ 彼の痛みを癒やせ)

出典:映画フィールド・オブ・ドリームス(拙者訳)―以下同じ

大学を出たあと核家族で農業を始めた主人公は、ある日、トウモロコシ畑の中でお告げのような声を耳にする。最初は何のことか分からなかったが、野球場の電光掲示板電にもお告げが点滅するなどして、野球場を作ればかつて八百長事件で球界を追われた名手シューレス・ジョーが帰ってくると確信。
そして、畑を草野球場に変えたら、はたしてジョーら追われた選手などghostsがやってきて野球を再び楽しんだ。しかしジョーは言う、

No, it was you.(いや、この球場は君のために作られたんだ―ここで癒やされる’彼’とは、君なんだ)

そして、グランド片隅にいたのは、昔仲たがいをし、父のキャッチボールの誘いも断るようになって、自分が家を飛び出し暮らしてるうちに亡くなってしまった主人公の父の若き姿だった。そう、主人公はずっと、和解しないまま父を死なせてしまったことを心の中で悔やんでいたのだ。もうやり直すことができない、癒やされない人生の傷。
主人公は若き父に言う、

Wanna have a catch?(キャッチボールする?)―I’d like that.(ぜひとも。)

父は声を詰まらせ返答した…、息子と和解できないまま逝ってしまった父も無念だったのだ。

多くの人を静かに感動させたのは、もちろん、主人公に起きた摩訶不思議な他人事それだけに感動したわけではない。
―誰しも何らか、経年の、どうすることもできない人生の悔い、傷といったものを心に抱えているものだが、それを奇跡の物語の中で癒やしてもらった主人公に、多くの人は自分を重ねて、癒やされた気持ちになるのである。

このような地味なストーリーで興行的に成功するか危ぶまれたそうだが、見事に成功したのは、実は多くの人が共感するテーマだったということである。
そして、撮影に使ったアイオワのトウモロコシ畑に作られた草野球場は、映画のエンディングの続編であるかのように、今なお取り壊されず、人々が訪ね集まって来る観光施設として維持され続けているようである。(参照:Field of Dreams Movie Site

※映画予告編情報は Field of Dreams Trailer などで検索できます。