心もよう(井上陽水)―歌詞:故郷のあなたを変えた巡る季節
(Tip)
― 1973 井上陽水(作詞作曲)
Key Words:離れて暮す恋が終るのは巡る季節
はじめに
井上陽水と聞けば、ほぼ伝説の、歌唱力抜群の歌手というイメージ。
中森明菜の曲を作ったり(飾りじゃないのよ涙は)、自分で歌ったり(いっそセレナーデ)、安全地帯の玉置浩二に協力して作った曲を2人で歌ったり(恋の予感)と、(決まってサングラスを掛けて)TVにも出て結構ハデに活躍していた様子。ちょい悪オヤジっぽさ、アンニュイさも漂う、けれど抜群の甘い声の歌い手という感じ。
曲の内容
けれども、もともとがフォーク歌手。ということで、出発点は、純粋な心の叫びの歌い手だ。
この歌が入ったアルバム・氷の世界は、当時爆発的に売れたようだ。
この歌…
歌詞が、pureで美しい。
失恋にあって、虚飾・虚勢を張ることなく、相手を責めることもしない。
よく、相手の移り気を責めたり、逆に、相手を思いやる余裕を無理に見せて、気持ちを取り繕ったりするのに。
高校を卒業して離ればなれに生活する恋人同士、というのが歌詞によくマッチする状況だろう。人によっては、大学、あるいは中学卒業後や、若いうちの転勤後かもしれない。
まだ別れていないものの、離れて暮らす相手の心も離れてしまったことが、もう分かっている”さみしさ”の心情。どんなに”手紙をしたためて”送っても、
さみしさだけを手紙に詰めて、ふるさとに住むあなたに送る、あなたにとって見飽きた文字…
出典:心もよう(井上陽水)―以下同じ
…”悲しい”心情が詰まるだけの、相手を飽きさせるだけの手紙。
(相手や、あるいは他の異性などという)誰のせいにするでもなく、
また、旅立つ相手をやけに気遣うわけでもなく、
あなたの笑い顔を不思議なことに今日は覚えていました。…季節はめぐり、あなたを変える
…ただ、あの(確かな)頃のあなたの笑い顔と、巡る季節(時の流れ)があなたを変えたという、
時を挟んだ2つの真実を素直に見つめ寂しさを発するだけのpureさが、美しい。
―若いうちは、それぞれの人生経験値が急激に増え、その傾向も変化していくから、離れた生活を送る2人が合わなくなってしまうのは、けっこう必然に近い。
相手を変えたのが結局は巡る季節だったというのはほとんど誰にとっても真実だから、当時は相手を責めたり、虚勢を張ったような誰しもが受け入れられる歌詞のこの曲で、今は静かにそれぞれの一時代を懐かしむ。
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