時代(中島みゆき)―歌詞は永別の癒し、鎮魂の歌

(Tip)

― 1975 中島みゆき(作詞・作曲)  
Key Word:大事な人の永別の癒し、鎮魂 

はじめに
もうずいぶんと以前の曲。数えてみれば、中島みゆき自身がまだ20代前半の頃での曲となる。
薬師丸ひろ子がカバーして歌ったりもしたらしく、広くメジャーになった曲だから、誰もが聴いたことがある曲だと思う。
まずメロディーが綺麗だから、それだけでも十分味わえる曲だ。

歌詞について
歌詞は、別れの歌であることは間違いない。

今はこんなに悲しくて涙も枯れ果てて…そんな時代もあったねといつか話せる日が来るわ…回る回るよ時代は回る、喜び悲しみ繰り返し

引用:時代 by 中島みゆき ―以下同じ

生まれて、出会いがって、別れも必ずあって…この曲はまず、人生につきもののそんな別れ一般を、癒やす曲だと捉えていい。だから歌詞は広く一般の共感を呼ぶ

ただ、自分は、耳に入っては聞き流す程度だったその歌詞の一部には、ちょっと合点がいかなく感じるところもあった。

今日は別れた恋人たちも生まれ変わって巡り会うよ

…えっ、恋人との失恋を癒やす歌詞としては、”生まれ変わって巡り合う”などとはちょっと大袈裟すぎではないか、生きてるうちにもっと何かして乗り越えようよ、と感じながら聴いていた。
また、

旅を続ける人々は…たとえ今夜は倒れても…今日は別れた旅人たちも生まれ変わって歩き出すよ

…恋人から、さらに”旅人”に範囲を広げて――、日々頑張っている人達を、倒れてもまた生まれ変わって歩き出すとは、いま生きてることをそう簡単に扱うなよ、などと感じながら聴いていた。

けれども、2011年大晦日のNHK紅白歌合戦で、この曲を、たしか徳永英明がカバーして歌っているのをしみじみ聴いて、合点することに。
この年の歌合戦は、明らかに、その年の東日本の地震による悲しみの癒やし、鎮魂を企図していたものだ。

この曲”時代”は、広く別れ一般を表したものだけれど、その中には、非常に厳しい別れである「永別」も、明らかに含んだものだった。永別の悲しみなど、そうは経験するものじゃないなどと呑気に日々暮らしていた自分は、この歌詞が持つ重みをふだん理解することができず、世間からすればちょっと深刻過ぎる表現だなどと誤解していたのだ。

こんな歌詞を、ふだん書いてしまう中島みゆきとは、何を日々感じ考え生きている、どんな感性の人なのだろうか…
そんなことにふと思いを馳せつつ、永別・鎮魂の歌と分かった今は、あまり多くを語る(書く)ことなく、静かに曲を聴く

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